抵当権抹消を放置してしまった場合
抵当権の抹消登記を放置してしまうと、登記上永遠に抵当権設定登記が残ってしまいます。これは月日の経過で自動的に消えるものではありません。
①銀行等の変遷
銀行等から交付をうけた解除証書(弁済証書)・委任状などがお手元にあっても、当時の発行権者の代表者が退任となっている場合は、登記申請書作成作業が複雑になります。
当時の代表者で申請書を作ってしまうと必ず補正となりますので注意が必要です。
また、銀行等が合併により解散してしまっているケースなどは、存続会社へ抵当権移転登記をしてからの抵当権抹消になりますので、ますますむずかしくなってしまう場合があります。
②抵当権抹消書類の紛失
銀行等からローン完済後に送られてくる封筒の中に、抵当権抹消書類が入っていますが、この書類を紛失しまっているケースがあります。
いざ、抵当権抹消をしようと思ったときに、この抹消書類がどうしても見つからない場合は、以前のローンを利用した銀行の支店に相談してもらう事になります。時が経っていると、当時の担当者は既に移動していたりして、書類も無いケースがほとんどですので、最終的には保証会社等に手配して、委任状と解除証の再発行をしてもらうことになりますので時間がかかるのを覚悟しなければなりません。
また、抹消登記の添付書類である抵当権の登記識別情報通知又は、抵当権設定契約証書は再発行できませんので、抹消登記申請では事前通知制度という特殊な登記申請の方法になります。
これは申請を受けた法務局から銀行等の本店へ事前通知をして、抹消に間違いがないかどうか本店からの返答を待ってする方法で、日数も、相手へ負担もかかります。この場合は当事者間においては心理的・手続的にストレスのかかるものになります。
③所有者に相続が発生してしまい相続人が抵当権抹消をする場合
この場合は、相続登記をして所有者を確定させてから抵当権抹消登記をします。
※相続登記の費用に関しては、弊社相続登記HPを一度ご覧になって頂き、お見積もりのお電話をください。
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④売却の予定がある場合
土地・建物を売却する予定があるときには、売主は必ず抵当権抹消をして買主に引き渡す必要があります。
事前に売主は抵当権抹消をしておくと、スムーズな取引が可能になります。
売買決済時に抵当権抹消書類が揃わないと取引が成立しませんので、買主にとても迷惑が掛かることになります。
司法書士業務の中でも、売買決済時において売主の住所変更と抵当権抹消は、一番神経をつかう所になります。
最近はめったにありませんが、知り合い同士で売買が決まって、本人達が登記申請をする場合、抵当権がついたまま所有権移転し、買主が知らずにいてしまう場合がありますので注意が必要です。
⑤銀行等から新たな融資を受ける場合
銀行等から新たに融資を受けて、土地・建物を担保に提供する場合、完済している抵当権は必ず事前に抹消しておく必要があります。
休眠担保権の話(古い抵当権のこと)
当事務所の相続登記の仕事で、お客様の不動産登記簿をしらべてみたら、明治時代とか大正時代の古い抵当権が付いていた。というケースがあります。
これは、大昔の所有者が抵当権抹消登記をしないまま何十年も放置し、現代まで残ってしまったケースなのです。
意外かもしれませんが、司法書士業務の中でたまに出現するものなのです。
この古い抵当権を休眠担保といいますが、この休眠担保を抹消する場合は、少々やっかいな手続きになります。
通常、現在の所有者に聞いても、当時の状況が一切わからないし、書類もありませんので、司法書士が抵当権者の所在(法人の場合は閉鎖登記簿)などを調査したりします。
この場合、抵当権者又はその相続人が行方不明であるケースが多いのですが、これでは抵当権に関する債権の弁済を証する書類を発行する人が居ないことになります。
特殊ですが、この場合は改めて弁済供託という方法で再度弁済する必要があります。
行方不明の抵当権者は弁済額を受け取れませんので、代わりに国の供託所に対し弁済額を供託することで、抵当権者に対して弁済があったとみなされる制度です。
手順としては、土地、建物の閉鎖登記簿謄本を見て弁済期をしらべます。当時の債権額から、弁済期までの利息、弁済期から現在までの損害額を算出し、合計した金額を供託所へ弁済供託をします。
行方不明を証する書面とあわせて弁済供託書を取得して抹消登記手続きをすることが出来ます。
以上の理由から、住宅ローン(事業用ローン)の完済後、すみやかに抵当権を抹消しておけば、なんの問題もなく、売買または、子孫に対して相続することが出来るのです。